この記事の要点
- 転職・復職で「その領域で働く看護職から話を聞けること」を望む人は26.7%、「仕事を体験できること」は20.0%(2025年看護職員実態調査)。
- 病院が回答した看護職員の月平均超過勤務は、500床以上で8.3時間、99床以下で3.8時間(2025年)。申請されない残業もあると指摘されていて、見学の日に確かめる価値があります。
- 2024年4月から、求人票には「業務の内容」と「就業場所」の変更の範囲も書くことになりました。配属や異動の範囲を確かめる手がかりになります。
- 薬剤師・検査技師・歯科衛生士など、職種ごとに見るところは違います。後半に職種別の追加ポイントを載せています。
求人票には、書けることしか書かれていません。休憩室がどこにあるか、記録は手書きか電子カルテか、夕方6時に何人が帰っているか。そうしたことは、その場に立つといちばんよくわかります。
日本看護協会の「2025年看護職員実態調査」では、転職・復職のときに望む支援として「その領域で働く看護職から話を聞けること」を挙げた人が26.7%、「仕事を体験できること」が20.0%でした。訪問看護へ移りたい人に限ると、それぞれ39.7%と29.9%に上がります。
出典: 厚生労働省「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」第4回資料3(2026年)に掲載された、日本看護協会「2025年看護職員実態調査」
この記事では、見学やお試し勤務の日に確かめたいことを、医療職に共通する項目と職種別の項目に分けてまとめます。根拠にしたのは、日本看護協会の就職ガイド『はたさぽ』(2025年10月版)、厚生労働省の統計、職業安定法のルールです。
行く前に、公開情報で下調べする
見学の時間は限られています。調べればわかることは先に調べておき、当日は「その場でしかわからないこと」に時間を使いましょう。
- 病院の看護配置:「7対1」などの入院基本料の区分は、各地方厚生局が公開している「届出受理医療機関名簿」で調べられます。ただし7対1は「患者7人に看護師1人がいつもつく」という意味ではありません。受け持ち人数は当日に聞きましょう。
- 診療科・設備・人員:厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)に載っています。
- 介護施設・訪問看護:介護サービス情報公表システムで、従業者の数や経験年数、離職者数などを見られます。
2024年4月からは、求人票に「業務の内容の変更の範囲」と「就業場所の変更の範囲」も書くことになりました(職業安定法施行規則4条の2)。配属先が変わる可能性や、系列施設への異動があるかどうかは、この欄から読み取れます。書かれていなければ、見学の日に聞いてかまいません。
医療職に共通するチェックリスト
『はたさぽ』は見学で確認することとして、職場の雰囲気、福利厚生設備(宿舎・駐車場・保育施設)、働く時間の管理(タイムカードなど、時間外勤務)、記録や情報管理(手書きか電子カルテか)、夜勤時の休憩・仮眠、教育・研修制度を挙げています。これに、辞める理由の調査で上位に出てくる項目を足すと、次のようになります。
- 1日の流れと受け持ち受け持ちの人数、申し送りの長さ、始業前に情報収集をしている人がいるか。実際の勤務時間帯で見るのがいちばん確かです。
- 残業の実態と申請のしかた月平均の残業時間に加えて、「始業前の情報収集は勤務時間に入るか」「記録の残業は申請できるか」。
- 休憩と仮眠休憩室・仮眠室の場所と広さ。規程の休憩時間が実際に取れているか。
- 記録のやり方電子カルテか紙か。オーダリングの有無。記録のために残っている人がいないか。
- 教育・フォローの体制プリセプター、エルダー、チーム支援のどれか。中途採用やブランクのある人向けのオリエンテーションがあるか。
- 夜勤・当直回数の実績(予定ではなく実績)、夜勤の人数、夜勤明けの休み、減免の条件。
- 休みの取りやすさ有給休暇の平均取得日数、希望休の出し方、子どもの急な発熱のときに誰が代わるか。
- 同じ働き方の人がいるか日勤のみ、時短、週数日のパートなど、自分と同じ条件で働く人が何人いるか。話を聞けるか。
- 職員どうしの言葉づかい申し送りやカンファレンスの雰囲気、質問したときの反応、新しい人への声のかけ方。
- ハラスメントの相談先相談窓口があるか、周知されているか。患者・家族からの暴言や暴力への対応方針。
- 通勤実際の出勤・退勤の時間帯の交通手段、車通勤の可否、駐車場代、夜勤明けの帰り道。
- 給与の内訳基本給と手当(夜勤手当は1回いくらか、資格手当、住宅手当)を分けて。モデルの手取り額。
数字で知っておくと、質問しやすくなること
残業は「大きい病院ほど長い」傾向
日本看護協会の病院看護実態調査では、看護職員1人あたりの月平均の超過勤務は、2025年で次のとおりでした。
| 病床規模 | 2022年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 全体 | 5.4時間 | 4.8時間 |
| 99床以下 | 4.3時間 | 3.8時間 |
| 200〜299床 | 5.0時間 | 4.3時間 |
| 400〜499床 | 7.8時間 | 6.5時間 |
| 500床以上 | 9.0時間 | 8.3時間 |
出典: 厚生労働省「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」第5回資料1(2026年9月)。日本看護協会「病院看護実態調査」の値
これは病院が回答した「申請された」超過勤務の平均です。同じ資料には、前残業や申請できない残業があって実態はもっと厳しい、という検討会委員の意見も載っています。数字は出発点にして、見学の日に「定時に帰る人がどのくらいいるか」を自分の目で見てください。
電子カルテは、まだ4割が未導入の規模もある
厚生労働省の医療施設調査によると、電子カルテの普及率(2023年)は一般病院で65.6%、一般診療所で55.0%です。200床未満の病院では59.0%で、残りの約4割は紙か未導入です。前の職場との違いに戸惑いやすいところなので、操作の研修があるかもあわせて聞いておくと安心です。
出典: 厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(医療施設調査より、2023年の値)
新卒向けの情報は、中途でも聞いてよい目安になる
新卒を募集する事業主は、求めがあれば、直近3年の新卒採用者数と離職者数、平均勤続年数、研修の内容、月平均の残業時間、有給休暇の平均取得日数などを提供することになっています(若者雇用促進法13条・14条)。中途採用には直接の義務はありませんが、「聞いても失礼ではない質問」の目安として使えます。
職種別に、追加で見るところ
同じ医療職でも、見るべきところは職種で変わります。上の共通リストに、次の項目を足してください。
看護師・准看護師
- 日勤・夜勤の実際の人数と受け持ち人数。看護補助者(看護助手)が何人いて、どの業務を担っているか。
- 2交代か3交代か。夜勤の休憩・仮眠が規程どおり取れているか。
- 配属先の決まり方。配属予定の病棟で見学・体験できるか。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
- 病棟の機能(急性期・回復期・地域包括ケア・療養)。同じ病院でもリハの時間の流れが違います。
- 同じ職種が何人いるか。1人職場なら、困ったときの相談先。
- 土日祝の出勤があるか(365日体制か)。訪問なら1日の訪問件数と移動手段。
詳しくはリハビリ職の職場えらびの記事にまとめています。
薬剤師
- 薬局・病院・ドラッグストアのどれか。病院なら病棟業務の有無、薬局なら在宅訪問の有無。
- 調剤機器の導入状況や予定。病院の当直・夜勤の有無と回数。
臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士
- 担当する分野(検体・生理・病理、一般撮影・CT・MRI、透析・手術室・ICUなど)と、ローテーションの有無。
- 当直・オンコールの回数。
- 2021年10月の法改正で加わった業務(採血時の静脈路確保など)をどこまで任せているか。必要な研修の受講を支援しているか。この研修は、一定の日より前に免許を取った人に求められます。
歯科衛生士・歯科助手
- 歯科衛生士と歯科助手の役割分担。歯石除去などの予防処置を資格のない人にさせている職場は、歯科衛生士法13条に反するおそれがあります。
- 夜診・土曜の出勤、時短や扶養内で働けるか。
- 滅菌・感染対策の手順が決まっているか。
医療事務・栄養士
- 医療事務:受付・会計だけか、レセプト請求まで任されるか。月初の残業の実態。電子カルテ・レセコンの種類と研修。
- 栄養士:病院・施設の直営か、給食会社への委託か(雇い主が変わります)。献立作成・栄養指導と調理作業の割合。早番・遅番の時間帯。
どの職種にも:賃上げの反映
2026年度の診療報酬改定(2026年6月から)で、ベースアップ評価料の対象が「主として医療に従事する職員」から「勤務する職員全体」に広がりました。事務職員なども新たに対象です。届け出ているか、給与にどう反映しているかを聞いてみるのも一つの方法です。
出典: 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ対応」(2026年)
当日の過ごし方
見学は、職場があなたを見る場でもあり、あなたが職場を見る場でもあります。遠慮して何も聞けずに帰るのが、いちばんもったいない過ごし方です。
- 聞きたいことは3つに絞ってメモしていく。全部を聞く必要はありません。自分にとって譲れない3つを先に決めておきます。
- 実際の時間帯に行く。お試し勤務ができるなら、配属予定の部署で、ふだんの勤務時間に。夕方の様子や帰り道も、その日にしか見られません。
- 案内役以外の人とも話す。自分と同じ働き方をしている人と話せると、求人票にない情報がいちばん手に入ります。
- 帰り道にメモを残す。よかったこと、気になったこと、聞きそびれたこと。複数の職場を比べるときに役立ちます。
このチェックリストは、『はたさぽ』や法令、公的調査をもとに編集部が整理したものです。「この項目を確認すれば長く続けられる」ことを確かめた研究があるわけではありません。確かめられるのは「入職前に実態を知る機会になる」ところまでです。最後は、あなた自身の感覚も大切にしてください。
出典・参考資料
- はたさぽ ナースのはたらくサポートブック(2025年10月版)(日本看護協会、2025年)
- 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 第5回 資料1「看護職員の勤務環境改善について」(厚生労働省、2026年)
- 同 検討会 第4回 資料3「看護職員の確保策について」(2025年看護職員実態調査を掲載)(厚生労働省、2026年)
- 「2025年看護職員実態調査」「2025年病院看護実態調査」結果(日本看護協会、2026年)
- 電子カルテシステム等の普及状況の推移(医療施設調査より)(厚生労働省、2023年調査)
- 職業安定法施行規則 第4条の2(e-Gov法令検索(デジタル庁)、2026年9月確認)
- 青少年の雇用の促進等に関する法律 第13条・第14条(e-Gov法令検索(デジタル庁)、2026年9月確認)
- 歯科衛生士法 第13条(e-Gov法令検索(デジタル庁)、2026年9月確認)
- 臨床検査技師等に関する法律施行令の一部を改正する政令等の公布について(医政発0709第7号)(厚生労働省、2021年)
- 令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ対応(厚生労働省、2026年)
この記事は2026年9月25日時点で確認できた資料にもとづいて書いています。制度や数字は変わることがあります。手続きや判断の前に、勤務先・税務署・年金事務所・自治体などの最新の案内をご確認ください。