この記事の要点
- 免許があって看護職として働いていない人は、2018年の推計で約79万人。40代以上が約6割です。
- ブランクが長いほど「再就職したい」と答える人は減ります(2年未満45.0%、5年以上22.2%)。不安を持つのは自然なことです。
- 都道府県ナースセンターの復職支援研修では、採血・注射の基礎技術、感染予防・医療安全、新しい医療機器などを練習できます。
- ナースセンターの求職者が就職でいちばん重視する条件は「勤務時間」で、希望する勤務形態でいちばん多いのは「日勤のみ」です(2024年度)。
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久しぶりに求人を眺めて、「採血、まだできるかな」「電子カルテって使えるかな」と手が止まる。ブランクのある看護師なら、きっと誰でも一度は通る場所です。
この記事では、公的なデータで「ブランクのある看護師」の姿を確かめてから、復職までの順番を、不安が小さくなる順に並べ直してみます。
まず、あなたは少数派ではない
看護師などの免許を持ちながら、看護職として働いていない人(潜在看護職員)は、2018年の推計で793,884人。約79万人です。年齢別に見ると40代以上が約6割を占めます。
出典: 厚生労働省「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」第4回資料3(2026年)。厚生労働科学研究による推計を引用したもの
そして、ブランクが長くなるほど、戻りたい気持ちは小さくなっていきます。潜在看護師306人に聞いた調査では、「再就職したい」と答えた人の割合は次のとおりでした。
| ブランクの長さ | 再就職したい | 回答者数 |
|---|---|---|
| 2年未満 | 45.0% | 129人 |
| 2年以上5年未満 | 34.4% | 96人 |
| 5年以上 | 22.2% | 81人 |
ブランクが長い人ほど不安が大きいのは、気持ちの問題だけではありません。ナースセンターの復職支援の事例報告では、離れて3年以上の人は「新しい知識・技術、現場の手順についていけるか」という不安が大きいとされています。一方で、以前に長く働いていた人は、戻ったときのイメージがはっきりしていて意欲も高いことが多い、とも書かれています。
出典: 厚生労働省 看護職員確保対策特別事業「都道府県ナースセンターにおける潜在看護職の復職支援事例に関する報告」(令和3年度)。同 検討会第1回資料3(2026年)に掲載
ステップ1:ナースセンターで「練習」する
各都道府県には、看護師等の人材確保の促進に関する法律にもとづくナースセンターがあり、無料の職業紹介や復職支援研修を行っています。2024年度には、研修を実施していると答えた46の都道府県センターのうち、研修の中身は次のようなものでした。
- 採血・注射などの基礎技術(95.7%)
- 感染予防・管理、医療安全(91.3%)
- 最新の医療知識・技術・医療機器(84.8%)
- BLS(一次救命処置)(73.9%)
出典: 日本看護協会 中央ナースセンター「2024(令和6)年度 中央ナースセンター事業報告書」(2025年)
実技の演習はすべてのセンターで行われていて、病院などでの現場実習を取り入れているところも半数を超えます。「採血が不安」なら、まず腕のモデルで練習する。それだけで、求人を見るときの気持ちがだいぶ変わります。
2015年10月1日から、看護職は離職したときなどに、連絡先などを都道府県ナースセンターに届け出るよう努めることになっています(看護師等の人材確保の促進に関する法律16条の3。努力義務)。届け出ると、研修や相談会の案内が届くようになります。届出サイトの名前が「とどけるん」です。
ステップ2:「最初の職場」の条件を決める
2024年度にナースセンターに登録した求職者が、就職でいちばん重視した条件は「勤務時間」でした(全体では、勤務時間、給与、通勤時間、看護内容、休暇の順)。希望する勤務形態は「日勤のみ」が最も多く、希望する施設は無床の診療所がいちばん多い結果でした。
出典: 日本看護協会「2024年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」(2025年)
復職の1社目は、「ずっと働く職場」でなくてもかまいません。まずは勘を取り戻すための職場、と割り切るのも一つの考え方です。たとえば次のような選び方があります。
- 日勤のみ・短時間から:クリニックや健診センター、日勤のみの正職員・短時間正職員の制度がある病院。
- 教育担当がいる職場:ブランクのある人や中途採用の人向けのオリエンテーション、プリセプターがあるか。
- 使う技術が限られている職場:自分が不安な手技が、その職場でどのくらいの頻度で必要か。
職場の種類ごとの違いは看護師の職場の種類の記事で比べています。
ステップ3:見学で「自分が戻る姿」を想像してみる
日本看護協会の2025年の調査では、転職・復職のときに「その領域で働く看護職から話を聞けること」を望む人が26.7%、「仕事を体験できること」を望む人が20.0%いました。ブランクがあると、求人票の文字だけでは「自分がそこで働く姿」を想像しにくいものです。
見学やお試し勤務の日には、次のことを確かめておくと安心です。
- 使う技術採血・点滴・輸液ポンプなど、自分が不安な手技をどのくらいの頻度で使うか。
- 記録の方法電子カルテか紙か。操作を教えてくれる人がいるか。
- 最初の数週間の過ごし方誰が教えてくれるか。1人で任されるまでの期間の目安。
- 同じ立場の先輩ブランク明けで入った人がいるか。話を聞けるか。
- 急な休みへの対応子どもの発熱などで休むとき、代わりは誰がするか。
もっと詳しい項目は見学・お試し勤務のチェックリストにまとめました。
パートで戻るなら、年収の壁も確認を
短時間から戻る人は、税や社会保険の「年収の壁」も気になるところです。2026年は所得税の壁が178万円に、税の扶養が136万円に変わりましたが、社会保険の扶養の130万円は残っています。看護師のパートの平均時給で計算すると、先に来るのは130万円のほうです。詳しくは2026年の年収の壁まとめをどうぞ。
戻る順番は、人それぞれでいい
研修から始める人、まず見学に行く人、知り合いのクリニックに週1日だけ戻る人。順番に正解はありません。ただ、不安の正体が「わからないこと」なら、それは調べたり、見に行ったりすることで小さくできます。
潜在看護職員の数は推計値です。2010年末の推計(71万人)と2018年の推計(約79万人)は推計方法が同じかどうか確認できていないため、増えたとは言い切れません。ブランクの長さごとに「どんな不安が多いか」を数で集計した調査は、今回は見つかりませんでした。
出典・参考資料
- 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 第4回 資料3「看護職員の確保策について」(厚生労働省、2026年)
- 同 検討会 第1回 資料3「看護を取り巻く現状について」(厚生労働省、2026年)
- 看護師等の人材確保の促進に関する法律 第16条の3(e-Gov法令検索(デジタル庁)、2026年9月確認)
- 2024(令和6)年度 中央ナースセンター事業報告書(日本看護協会 中央ナースセンター、2025年)
- 2024年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析(日本看護協会、2025年)
- 2025年 看護職員実態調査(日本看護協会、2026年)
この記事は2026年9月25日時点で確認できた資料にもとづいて書いています。制度や数字は変わることがあります。手続きや判断の前に、勤務先・税務署・年金事務所・自治体などの最新の案内をご確認ください。